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【インタビュー】家庭用ガス警報器のアメリカ展開

営業計画推進部 モス男

営業計画推進部 モス男

1960年代に「ガス事故をなくしたい」という想いで、世界で初めて当社が開発した家庭用ガス警報器。日本国内では、義務設置でないにも関わらず普及率が約6割と多くのご家庭に設置していただいています。

当社はこれまでにも幾度となく家庭用ガス警報器のグローバル展開に挑戦してきた過去がありますが、その道のりは大変険しいものでした。

今回は、アメリカを中心にようやく加速し始めた家庭用ガス警報器のグローバル展開について販売を行うNew Cosmos USA Inc.の加藤CEOと機器開発を担当する新コスモス電機㈱技術開発本部の西上本部長にインタビューをしました。


モス男:早速ですが、なぜ家庭用ガス警報器は日本で普及したように各国で普及しなかったのでしょうか?

加藤:国によって状況は異なりますが、当社が昔からアプローチしてきていた欧米については、日本との文化の違いが一番大きいのではないかと思います。

モス男:文化の違いとは?

西上:日本でここまで家庭用ガス警報器が普及した背景には、LPガス事業者様・都市ガス事業者様の「ガスを売るからには安全も一緒に売らなくては」という強い信念があったからです。一方、欧米の考え方は「ご家庭でのガス事故は個人の責任」という考え方が根強いと感じます。

加藤:ですので、欧米のガス事業者にどれだけガス警報器が役立つかということをご理解いただいても、ガス事業者が購入してエンドユーザーに販売しよう、というビジネスモデルは生まれてこないのです。

ConEdison社採用 電池式ガス警報器

モス男:なるほど。ただ、今回アメリカニューヨーク(以下、NY)州のエネルギー事業者であるCon Edisonが当社のガス警報器を採用してくださったんですよね?

西上:実は、Con Edisonさんの供給エリア内で、2014年に大きなガス爆発事故がありました。マンションでの事故だったので、多くの市民が犠牲になり大変大きなニュースとなりました。

加藤:アメリカではガス配管の老朽化によるガス爆発事故が多発しているんです。約10日に1件のガス爆発事故が起こっているとも言われています。

モス男:日本では、ご家庭の台所でガス爆発事故なんて近年あまり聞かないですが、なぜなのですか?

西上:日本はガス警報器も普及していますし、Siセンサーなどその他の安全装置もすごく普及しています。また、地震大国なのでよくも悪くもガス配管は新しいものに取り替えられて整備が進んでいます。一方で、アメリカは日本よりもかなり歴史が古い国ですし古いガス配管が今でも大量に使用されていると聞いています。

加藤:その事故を受け、Con Edisonが世界中のガス警報器メーカーからガス警報器を集め評価を行なっているという情報を当社のグループ会社であるフィガロ技研さん経由で入手しました。フィガロさんはアメリカでは知名度があるガスセンサメーカーなので、情報が入ったのだと思います。

西上:運がよいことに、当社ではその数年前に超省電力化を図ったMEMSセンサという新しいガスセンサを開発し、世界初の電池式家庭用ガス警報器の開発に成功していました。

加藤:その機器をベースとした電池式で当時は約5年の電池寿命の製品をCon Edisonに提案したところ、数あるガス警報器メーカーの中で当社のガス警報器が選ばれたのです。

モス男:ずばり、選ばれた要因はなんだったのでしょうか?

西上:はっきりは聞いていませんが、やはり電池式で長寿命という点と、MEMSセンサが大量生産に向いていてコストも安いという点ではないでしょうか。あとは、日本で数多くの家庭用ガス警報器を販売してきた当社の実績も認められたのだと思います。

加藤:その後、アメリカ向けの警報器はさらに寿命が伸びています。

モス男:いつ頃採用が始まり、今どれくらいの数が付いているのですか?

加藤:Con Edisonでは2019年から順次設置が始まり、NY市の約15万世帯にガス警報器が設置されていると伺っています。そのほかのガス会社でも納入実績が増えてきています。

西上:先日Con Ediosonさんを訪問した際には「すでに多くのガス漏れを警報器が検知していて、その中には重大事故に繋がりかねないガス漏れもあった」とおっしゃっていました。

関連ページ:アメリカで採用されたメタン検知器が、 800件以上のガス漏れを検知しています(リリース) >

モス男:それだけガス配管の老朽化が深刻ということですね。

加藤:当然それはNYだけではないですし、今後はより多くのご家庭にガス警報器を届けられるよう他のガス事業者さんへも積極的にPRをしています。

西上:今アメリカ国内で、家庭用ガス警報器の設置基準などもようやく固まってきて、いよいよ舞台は整ってきたという状況です。

加藤:今回決められた設置基準では、キッチンだけでなく、ボイラー室やランドリースペースにも設置することが推奨されているので、1家に2~3台のガス警報器が設置されるということです。

モス男:それは義務設置ということですか?

加藤:今はまだアメリカ全土の設置基準が決まった段階で、今後各州がどれだけスピーディーに条例化に進んでいくかということろですね。

西上:アメリカは、州がひとつの国みたいに独立していますからね。その中に市があり町がある。なかなか一筋縄ではいきませんが、よい流れであることは間違いないと思います。

加藤:やはり当社の最大の目的は「世界中のガス事故をなくす」ことなので、そのためにこの広い国アメリカでしっかりガス警報器を普及させて、1件でも多くのガス事故を撲滅していきたいです。

西上:当然、アメリカだけでなくヨーロッパもガス配管の老朽化という点では状況は同じですので、ヨーロッパへも普及させなくてはと思っています。

関連ページ:最先端技術 MEMSセンサ×家庭用ガス警報器 >

モス男:その他の国はどうなのでしょうか?

西上:中国は当社がかなり前から現地法人を作って、電池式ガス警報器も発売していますし、徐々に認知されてきています。

加藤:東南アジアなどは、今ちょうどLPガスが各家庭に普及し始めていて、日本の50年程前のようにLPガス事故が増えていると聞いています。扱いも慣れていないし、日本のように安全装置も普及していないですしね。

モス男:世界中に、家庭用ガス警報器の需要があり、今まさに当社に「世界中のガス事故をなくす」チャンスが回ってきているということですね!ありがとうございました。

※2015年4月に、東京ガス㈱、大阪ガス㈱と当社を含む3社のガス警報器メーカーが協力して開発

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